成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は顔を上げると、成瀬をじっと見つめた。

「このプレゼントをもらった時、社長に言われました。『自信を持っていいんだよ』って……。私、ずっと敵わないと思ってたんです。柊馬さんは、きっと今でも佳菜さんの事が好きなんだろう、と思って……」

 成瀬は驚いたように目を丸くすると、真理子の両肩をキュッとつかむ。

「だからあの日、泣きながらマンションを飛び出したのか?」

 真理子はうつむいて、小さくうなずく。


「はっきり聞くのが怖かった。柊馬さんの気持ちを聞く、勇気がなかったんです……」

 成瀬は大きくため息をつくと、真理子を抱き寄せて頭をポンポンと優しく撫でた。

「俺は、本当に不器用だな……。そんなつもりで、言ったんじゃないんだ……」

「でも佳菜さんが、初めて笑い方を教えてくれたって……」

 真理子がそっとスーツの裾をつかむと、成瀬は穏やかな表情で真理子の顔を覗き込んだ。
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