成瀬課長はヒミツにしたい
「突然の招集で驚いた方もいるかも知れませんが、このチームは社長の指示で立ち上げたものです。そのため、リーダーは私にはなっていますが、最終的な判断はすべて社長が行います」

 緊張した面持ちのメンバーの前で、成瀬の低い声が会議室内に響いた。

「我が社は数年前、電飾玩具の製造メーカーから、イルミネーションライトの製造メーカーへと方向転換しました。主には大型の商業用イルミネーションが中心ですが、今後は個人客をターゲットにした小型のものにも手を広げていく予定です」

 真理子は手元の資料に目を落とす。


 電飾玩具の時代からの流れで、取引先のほとんどは卸の業者など、対企業になっている。

 個人の顧客への販路は、今までは持っていなかった。

「そのための、自社オンラインショップってことか……」


 真理子は、子供の頃から電飾玩具が大好きで、サワイライトは憧れの会社だった。

 特に、あの王冠のおもちゃは、真理子にとって宝物だ。

 『この会社で働きたい』

 その思いを胸に、採用試験を受けたのだ。
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