成瀬課長はヒミツにしたい
 ――全然、違う。


 真理子は、成瀬の熱を帯びた瞳に捕らえられ、吸い込まれるようにぽーっと顔を上げる。


「もう、ヒミツにしないよ……」

 成瀬の低い声が耳元で響いた。


 その瞬間、真理子の唇は成瀬に優しく奪われた。

 真理子は一気にのぼせたように全身が熱くなる。

「わ、わ、わ……」

 真理子はつい、甘い雰囲気をぶち壊すように、じたばたと暴れてしまった。

 言葉にならない声を出す真理子に、成瀬はぷっと吹き出すと、愛おしそうに真理子の頬をそっと撫でた。


「お前といると、本当に楽しいよ……」

 成瀬はそう言うと、再び真理子を優しく抱き寄せて唇を覆う。

 真理子はこのまま自分が、とろけてしまうんじゃないかと思いながら、そっと目を閉じた。



 その夜、甘い吐息とともに、何度も伝わってくる成瀬の熱を感じながら、真理子は夢の中に落ちていった。

 床に無造作に置かれた成瀬の鞄の中では、ハートのステッキが、二人を見守るようにキラキラといつまでも輝いていた。
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