成瀬課長はヒミツにしたい

「親子遠足……ですか？」

　真理子は首を傾げると、成瀬に手渡された紙を覗き込む。

　隣では、乃菜がダイニングテーブルの椅子に立ち上がり、真理子の肩に手をかけながらニコニコと一緒に紙を見ている。


「そう。毎年この時期にあるんだよ。親子でレクレーションして、弁当食べて帰るっていうイベント。今までは、俺が一人で参加してたんだが、今年は明彦も参加できそうなんだ。それで、真理子も一緒にって言ってるんだけど」

　成瀬は、白身魚のフライをひょいとひっくり返すと、真理子に顔を向けた。

　ハーブの香りが鼻先をかすめ、思わずお腹がぐーっと鳴りそうになる。


「私も行っていいんですか？」

「当たり前だろ。乃菜はお前と行きたいんだと。園にも確認してるから、安心しろ」

　成瀬が乃菜に目配せすると、乃菜は期待のこもった目で、真理子をじっと見つめている。