成瀬課長はヒミツにしたい
 でも真理子が入社する前に、すでに会社は傾きかけていたようで、そんな時に先代社長が急逝。

 別の企業に勤めていた息子が、急遽呼び戻され、後を継いだという事だ。


「この話、専務はよく思ってないんだって」

 隣でひそひそ話す声が聞こえる。

「そもそも社長が今の座に就いたのも、専務の反対を押し切って、常務が無理やり後を継がせたって噂だもんね」

「専務派と常務派かぁ。小さい会社でも、派閥争いってあるんだねぇ」


 話を聞きながら、真理子はまた目線を落とした。

 イルミネーションライトへの方向転換が軌道に乗り、今や会社は上向きに成長している。

 それは現社長の手腕によるものだ。


 それでも、電飾玩具に憧れて入社した真理子にとっては、いずれ会社が電飾玩具事業から撤退してしまうのではないか、という不安はあった。


 ――そういや、社長ってどんな人だったっけ? ほとんど会ったことないから、わかんないや。
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