成瀬課長はヒミツにしたい
「それにしても、そんな大きな仕事を取ってくるって。やっぱり社長って、すごいんだなぁ」

 真理子がぽろっとつぶやいた時、後ろでカタンと音がした。

「え?」

 首を傾げた真理子が振り向くより早く、真理子は後ろから抱きすくめられる。

「ふーん」

 不機嫌そうな低い声が耳元で響いた。


「と、柊馬さん?! ちょっと、ここ社内ですよ」

 真理子は頬を真っ赤にして身をよじるが、成瀬は一向に離してくれない。

 それどころか、真理子の首筋に顔をうずめると、そのままチュッとキスをした。

「きゃ……もう!!」

 沸騰しそうな程、上気した真理子を見て、成瀬はぷっと吹き出す。


「すまん。真理子見てたら、いじわるしたくなった」

 成瀬は、カンカンに怒って肩をいからせる真理子をなだめるように、頭にポンと手を当てた。

「誰かに見られたらどうするんですか! “クール王子”崩壊ですよ」

 真理子は頬をぷうっと膨らませる。

「ん? そりゃ、まずいな」

 成瀬は飄々(ひょうひょう)とした顔で、湯呑の乗ったトレーをひょいと持ち上げた。
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