成瀬課長はヒミツにしたい

広がる溝

「きょうは、みんなでごはんだね」

 乃菜は、社長の腕を掴むとにこにこと嬉しそうにしている。

「今日の夕飯は何かな?」

 乃菜と手を繋ぎながらリビングに入ってきた社長は、真理子と成瀬の顔を見ると一瞬口を閉じる。

 そして二人の表情から、何かを感じ取った様子で静かに目を逸らした。


 ぎこちない空気が流れる中、四人で食卓を囲む。

「のなね、なわとび、とべるようになったんだよ」

「縄跳び? すごいなぁ」

「いっかいね」

「一回でも飛べたらすごいもんだよ」

 社長は何度も乃菜の頭を撫でている。

 乃菜の会話だけが、その場の空気を和ませてくれた。


 食事が終わり、真理子がキッチンで片づけを始めた時、成瀬の声が後ろから聞こえてきた。

 振り返ると、乃菜は一人で夢中になってテレビを見始めている。

 真理子はそれを確認してから、社長と向かい合わせに座っている成瀬の隣に腰かけた。
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