成瀬課長はヒミツにしたい
「撤退の話……だよね」

 しばらくして、社長はワイングラスを傾けながら、重い口を開いた。

 真理子は社長の物悲しそうな顔を見つめる。


「どこかで期待してたんだよね。二人は無条件に、俺を応援してくれるんじゃないかって」

 社長の言葉に、成瀬は静かに机の上で手を組んだ。

「応援はしてるよ。いつだって、お前と乃菜をサポートしたいと思ってる。でも、撤退の話は急すぎる。お前に対する、社内の反発が大きくなるんじゃないか?」

 成瀬の低い声が響き、乃菜がチラッとこちらを振り返った。


「急じゃないよ。前々から考えてたことなんだよ。柊馬だって、数字を見てるんだから、わかるでしょ?」

 成瀬は黙ったまま、じっと社長を見つめている。

「もともと、電飾玩具は単価が低いのに、コストと手間がかかる商品だってことは、サワイにいればみんな知ってた。それをやめなかったのは、過去のしがらみでしょ?」
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