成瀬課長はヒミツにしたい
 若い社員たちの会話は止まらない。

「それにしても成瀬課長が常務派なのは、ちょっとショックだなぁ。社長のいい理解者だと思ってたのに……」

「水木さんの影響なんじゃないの?」

「あぁ、なんかあの二人、怪しいって噂だよね」

「えぇ?! なにそれ、本当?! ちょっとやめてよー」

 まるで友達同士の会話のように声を出す社員たちに、社長は一瞬押し黙った。


 電飾玩具事業撤退の話は、今やひとり歩きし出している。

 そして社長は、自分が知らない所で二人が常務と話をしていたという事にも、少なからずショックを受けていた。


 その日の夕方、真理子と成瀬は社長室へと呼び出された。

「今日、若い社員から、二人は常務派だって言われたよ」

 窓に目線を移し背を向けたまま話す社長に、真理子は「え……」と声を漏らす。

「常務派ってなんだよ。俺と真理子は何も言っていない」

「でも、常務と話したんでしょ? 撤退の事について……」

 真理子はそっと成瀬の顔を見上げた。

 成瀬は深くため息をつく。
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