成瀬課長はヒミツにしたい
 キャーキャーと子供たちの楽しそうな声が響く。

 広大な敷地の公園の芝生には、親子たちの色とりどりなレジャーシートが広がっていた。

 青空の下、明るい音楽が流れている今日は、絶好の遠足日和だった。


 明彦は、自分の隣で広いレジャーシートの真ん中にちょこんと座っている、乃菜の顔を覗き込んだ。

 乃菜は、笑顔の両親に囲まれてお弁当を食べる友達を眺めながら、手に取ったおにぎりを握りしめていた。


「やっぱり、パパのおにぎりは、へたっぴだったね……」

 明彦の声に、乃菜はうつむくと小さく首を振った。

 丸とも三角とも言えない形の、平べったいおにぎり。

 横からは、中身の鮭が飛び出していた。


 乃菜は手元を見つめると、下を向いたままおにぎりにかぶりつく。

 飛び出した鮭が、コロコロとレジャーシートに転がった。

「あ……」

 それを目で追っていた乃菜の視界は、じわじわと次第にぼやけてくる。

 乃菜は鼻をすすると、涙をこぼさないように、必死でおにぎりを口に詰め込んだ。
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