成瀬課長はヒミツにしたい

初仕事の日

「まったく、私も律儀なもんだよね」

 日曜日のAM8:50。

 真理子は、あの高層マンションの前に立っていた。


「結局、のこのこ現れちゃうし……。本当に、バカがつくほどのお人好しかも」

 それもこれも、眼鏡を外した成瀬の、ギャップのある態度が原因だ。


「眼鏡がスイッチかって思うほどの、変わりようだよね……。どう考えても、成瀬課長が悪い……」

 真理子は、うんうんと一人納得しながら、受付のコンシェルジュに声をかける。

 しばらくしてからカードキーを手渡され、真理子はぶつくさ文句を言いながらもエレベーターに乗り込んだ。


 扉の前でインターホンを鳴らすと、「はーい!」という可愛らしい声とともに、乃菜が玄関を開けてくれた。

「まりこちゃん!」

 乃菜はすっかり真理子を受け入れてくれた様子で、満面の笑みを見せる。

「乃菜ちゃん。おはよう」

 真理子もつられて笑顔になった。
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