成瀬課長はヒミツにしたい
「でも、社長は私たちの事を応援してくれて……」

 真理子は泣きそうな顔になりながら、小宮山を見上げる。

「そりゃ応援したのは本心だと思うよ。でもその一方で、葛藤もあったんじゃないかな?」

 小宮山の言葉に、真理子と成瀬は口を閉ざし、室内は静寂に包まれる。


「私たちは、どうすればいいんですか……?」

 しばらくして声を出した真理子に、小宮山は口元を引き上げると、にっこりとほほ笑んだ。

「だから、社長に教えてあげるのさ。一人じゃないよって。孤独なんかじゃないんだよって……。本当は最初から、一人なんかじゃなかったんだけどさ。俺なんかもう、全身全霊で社長に尽くしてんだけど!」

 小宮山は、上を向いてあははと声をあげて笑った後、真面目な顔で姿勢を戻す。

「もう一度、みんなで教えてあげようよ。その上で社長が撤退を判断したのなら、俺はその決定を支持するよ」

 小宮山の瞳には、ゆるぎない決意のようなものが映っている。
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