成瀬課長はヒミツにしたい
 女性社員たちは顔を見合わせると、ゆっくりと近づいた。

「私たち今持ち回りで、社長のお嬢さんのお迎えを担当しているの」

「……乃菜ちゃんの?」

 真理子はその言葉にはっとすると、思わず前のめりになる。

 真理子たちが家政婦に入らなくなってから、乃菜がどう過ごしているのか、ずっと気になっていたのだ。


「私たちが担当しているのはお迎えだけで、食事の支度とか身の回りのことは、派遣された家政婦さんがやってる」

 真理子は話を聞きながら、表情を曇らせた。

 慣れない人たちと一緒に過ごす時間は、乃菜にどれだけ負担をかけているんだろう。

 すると一人の女性社員が、真理子の顔をチラッと見あげ、そのまま勢いよく頭を下げた。


「私たち、誤解してました。ごめんなさい……」

 それに続いて、他の社員たちも一斉に頭を下げる。

「え? ど、どういう事でしょうか?」

 真理子は突然の状況に訳が分からず、しどろもどろになりながら声を出した。
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