成瀬課長はヒミツにしたい
「それと……成瀬課長と付き合ってるってことも、聞いちゃった♡」

「……へ?」

 ニコニコと顔を見合わせる女性たちに、真理子の目は点になる。

 つい今しがたまで溢れそうだった涙も、サーッと音を立てるように引いていった。


「社長とお嬢さんが、キューピッドだったんでしょ?」

「マンションでは、いつもイチャイチャしてるって♡ もう、お熱いんだから!」

 そう言いながら、一人が真理子の腕を、人差し指でツンツンする。


「ん? んん……?」

 真理子はツンツンと揺らされる腕もそのままに、頭の中は真っ白だ。


「成瀬課長が、水木さんにゾッコンだって聞いたよ」

「あの成瀬課長を落とすなんて、すごすぎ! 今度、恋のテクニック教えてよ」


「はい~?!」

 真理子は思わず大声で叫ぶと、卒倒しそうになりながら天井を仰ぐ。


 ――乃菜ちゃん……。それは、言わなくていい事だった……。


 白目を剥いて固まる真理子を横目に、女性社員たちはきゃっきゃと色めき立つ。
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