成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は委託先があったことを初めて知り、驚いた顔をする。

「小さな町工場(まちこうば)なんだ。元々サワイの玩具は、自社工場ができる前は、いくつかの町工場に依頼して作ってたんだ」

 成瀬の話によると、自社工場ができた後、ほとんどの町工場と取引を終了したが、一社だけ先代の意向で取引を継続しているそうだ。


 コンコンとノック音が響き、真理子はそっと扉を押し開けた。

 中には常務と共に、すでに話をしていたらしき成瀬の姿が見える。

 常務は穏やかな顔のまま、真理子に目の前のソファをすすめた。

 真理子は成瀬に目配せすると、そのまま隣に腰かける。


「水木くん。創業記念イベントの件は君の発案らしいね。素晴らしい企画をありがとう」

 常務の言葉に、真理子は少し照れるように下を向くと小さくうなずいた。

「二人には、社長を説得してくれなんて無責任なことを言って、申し訳なかったと思っていたんだよ。でもこうして、社内を一つにしようと動いてくれたことに、本当に感謝している」
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