成瀬課長はヒミツにしたい
 そこまで信頼関係のあったサワイを、なぜ卓也は裏切るようなことになったのだろう。

「俺はサワイに恩を感じてたし、だからこそサワイで働きたいと思った。でもあの時、専務に言われたんです。『社長はイルミネーションライトだけを重視し、過去の付き合いは、いずれバッサリと切り捨てるだろう』って」

「それで、あんなことを……?」

 うなずく卓也を見ながら、真理子は静かに目を閉じた。

 サワイを信じていたからこそ、卓也の心は専務の言葉にかき乱されたのだろう。


「まぁでも……その言葉もあながち間違ってはいなかった、ってことですよね? 成瀬課長」

 卓也は静かに顔を上げると、成瀬の顔を鋭く見つめる。

 成瀬は深く息を吐くと、(ひざ)(ひじ)を突き卓也の顔を覗き込んだ。


「それで、本題なんだか……」

 卓也は成瀬の顔を見返すと、急にニッコリと笑顔を見せる。
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