成瀬課長はヒミツにしたい
 会場を見渡しながら肩をすくめる卓也は、若干あきれ顔だ。

「すごいでしょ? 小宮山さんが、徹底的にガードしてくれたおかげなんだよ」

 真理子は得意げに鼻先を上に向ける。


 すると横から顔を覗き込ませた成瀬が、卓也の手元の箱を指さした。

「もしかして……完成したのか?」

 成瀬の声に、卓也はニッコリとほほ笑むと、持っていた箱のふたをそっと開く。

 真理子と成瀬は、はやる気持ちを抑えきれずにぐっと中を覗き込んだ。


「あぁ……」

 その中身を見た瞬間、真理子の口から思わず声が漏れる。

 真理子は、次第に潤んでくる瞳を成瀬に向けた。

「これで全部揃ったな。後は明彦を呼ぶだけだ」

 成瀬の優しい顔を見上げながら、真理子は何度もうなずいた。


「あれ? 佐伯じゃない?!」

 卓也の同期の子たちが驚いた顔で駆け寄ってくる。

 楽しそうに話す声を遠くに聞きながら、真理子は両手にぐっと力を入れた。


 いよいよイベントは明日だ。

 成瀬がそっと真理子の肩を抱き、二人はお互いの高まる気持ちを確かめた。
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