成瀬課長はヒミツにしたい
　真理子は、呆然としている社長の隣に静かに立った。

「あの電飾玩具は、先代が最後に書いた設計図をもとに、作られたものです」

　そっと社長の前に設計図を差し出す。

「設計図……？」

　社長は設計図を手に取ると、まじまじと覗き込み、はっと顔を上げた。


『これは、先代社長がお孫さんのために、自ら設計された電飾玩具です』

　落ち着いた声で、司会のアナウンスが入る。


「先代は、お前たち家族の事を、陰で見守っていたんだよ。もしかしたら、お前を飛び出させてしまったという、後悔もあったのかも知れない。それでも、お前たち家族の幸せを願ってた。あのティアラは、孫の乃菜のために先代が残したものなんだ」

「そんな……」

　社長は小さく呻くように声を出すと、設計図を握りしめ、うつむくように目を手で覆う。

　社長の身体は小刻みに震えている。

　成瀬は、優しく社長の背中に手をかけた。

　すると、会場内は再び薄暗くなる。
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