成瀬課長はヒミツにしたい
「今日は、本当に素敵なパーティだったよ」

　突然、隣で声が聞こえ、成瀬が振り返ると常務が満足そうな笑顔で立っていた。

「全部、水木さんのおかげです。私はそれを、サポートしただけです」

　成瀬が答えると、常務は穏やかな笑顔で何度もうなずく。

「彼女には、何度も助けられた。成瀬くん。君は本当に、素晴らしいパートナーを見つけたね」

　口元を引き上げる常務に、成瀬は「え？」と目を丸くした。


「本当はね。君にうちの末娘を、紹介しようと思っていたんだよ。娘が君のファンでね」

　常務は、頭をかきながら、はははと大きな声をあげて笑う。

「でも、娘には諦めろと伝えておくよ。成瀬くんには、もう大切なパートナーがいるからってね。家政婦じゃなく、人生のね」

　常務は、驚いた顔をする成瀬を楽しそうに見ると、そのまま別のテーブルへと移って行った。


「人生の……パートナー」

　成瀬は、自分自身に刻み込むように小さくつぶやく。

　そして顔を上げると、会場の真ん中で楽しそうに笑っている真理子の元へと足を踏み出した。
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