成瀬課長はヒミツにしたい
 乃菜は二人の会話をにこにこ顔で聞きながら、はふはふとカレーを頬張っている。


 最近、明彦は乃菜と一緒に考えていることがあった。

 それは柊馬と真理子に、イベントのお礼をしたいという事。

 でも、なかなかいい案が思いついていない。


「そう言えば、結婚の事。真理子ちゃんと、具体的に話は進んでるの?」

 明彦の声に、柊馬が困ったように頭をかいている。

「いや、それが……あれ以降、特に話してないんだよな。本当は、あの場でプロポーズする予定じゃなかったし……」

「え?! そうなの?!」

「ちょっと、常務に焚きつけられたっていうか……」

「はぁ? なんだよ、それ。真理子ちゃんの事になると、柊馬は冷静じゃなくなるからなぁ……」

 明彦は大袈裟に両手を振ってため息をつくと、柊馬を上目遣いで覗き込む。


「じゃあ当然、婚約指輪も渡してないよね?」

「あぁ、準備はしてるんだけど。いざ渡すとなるとタイミングがなくて」

 柊馬は珍しく深くため息をつくと、ほとほと困った様子で下を向いた。

 元々、柊馬は恋愛に関して不器用だと思っていたが、ここに来てそれが顕著になっているようだ。


「ふーん、そっかぁ」

 明彦は乃菜と顔を見合わせると、にんまりとほほ笑み合った。
< 382 / 413 >

この作品をシェア

pagetop