成瀬課長はヒミツにしたい
「ねえねえ! 結婚式っていつになったの?」

 秘書課のみんなで入ったダイニングバーで、真理子は一斉に顔を覗き込まれる。

 今日は秘書課の女性社員だけでの親睦会だ。

 でも正直、親睦会というのは名ばかりで、みんなの興味は真理子と成瀬の結婚話だった。


「い、いやぁ。具体的には、まだ何も話してなくて……」

 女性社員から囲まれるなんて、今までこんな経験はないのだから、真理子は終始だじだじだ。

 ぎこちなく答える真理子に、一斉にみんなが叫んだ。

「あんな公開プロポーズだったのに?!」

「両親にも挨拶してないの?!」

「婚約指輪もまだ?!」


 みんなの勢いに、真理子は思わずのけ反った。

 真理子だって、プロポーズの時に指輪を渡すとか、親も一緒に顔合わせをするとか、何となく知ってはいる。

 でも、実際自分の身に起こってみると、何から進めるものなのか正解がわからない。


 ――それに、あのプロポーズ以降、柊馬さんと特に結婚の話題になってないんだよね……。


 自分は本当に、プロポーズされたのだろうか。

 小さな不安が心をよぎりため息をついた時、真理子のスマートフォンがメッセージの着信を告げる。

 それは社長からの、ピクニックのお誘いだった。
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