成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子たちが入口に到着すると、すぐに乃菜が両手を広げて飛び込んできた。

「ねぇ。さきに、からあげ、たべていい?」

 乃菜はバスケットを覗き込んだまま、成瀬のシャツの裾をグイっと引っ張る。

「おい、来たばかりだぞ。昼まで待てないのか?」

「まてないよーだ。とうたんのけちー」

 乃菜は真理子からバスケットを受け取ると、それを持ったまま走り出す。

「あんな口きいて。こら! あぶないだろ」

 成瀬はため息をつきながら、レジャーシートの入った鞄を真理子に手渡すと、乃菜を追いかけて、公園の奥へと走って行った。

 真理子は社長と顔を見合わせると、笑い声をあげながら二人を見送る。


「今日はありがとうございます。ピクニックに誘っていただいて」

 パークの中を進みながら、真理子が隣を振り返ると、社長は嬉しそうにニッコリとほほ笑んでいた。

「二人に何かお礼がしたくってさ。今日は乃菜と、ばっちりスケジュール立てたから、楽しみにしててね」

 胸を張って自信満々に言った社長の言葉通り、その日は一日パーク内を遊び倒すように隅々まで巡った。
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