成瀬課長はヒミツにしたい
「まあね」

 明彦は素直にそう言うと、パソコンの画面に目を向けた。

 小宮山はその様子にクスリと肩をすくめ、秘書室に戻って行く。


 イベントでのプロポーズから数年後、真理子と成瀬の間に子供ができたと聞かされた時、明彦は乃菜と共に手を取り合い、飛び跳ねて喜んだ。

 乃菜はまるでこれから自分に弟か妹ができるのではと思う程、しばらく興奮していたほどだ。


 それから数カ月が経ち、真理子の産休入りはもう目前だ。

 ここ最近、成瀬は平日は真理子と一緒に帰宅し、土日に食材の作り置きをしに、明彦のマンションにやってきている。


 ――ほんっと、柊馬ってマメだよね。感心するよ。


 真理子の妊娠がわかり、明彦は二人に何度も『家政婦業は辞めていい』と言ったが、頑として受け入れてくれなかった。


 『少しでも、乃菜ちゃんのために協力したいんです』


 真理子は体調をみながら、成瀬もできる範囲で、今までのようにサポートしてくれた。

 でもそれも、そろそろお(しま)いになる。
< 394 / 413 >

この作品をシェア

pagetop