成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子が産休に入ったら、成瀬の家政婦業も終了すると、明彦が宣言したのだ。

 明彦はぼんやりと画面を見つめながら、大きなお腹をさすり幸せそうに微笑む真理子の姿を思い出す。

「佳菜が妊娠した時と重なっちゃうな……」

 明彦はぽつりとつぶやくと、気持ちを切り替えるように首を振り、小宮山が置いて行った資料を手にした。


 真理子が産休に入った後、明彦は第二秘書は置かない予定だった。

 元々秘書は、小宮山だけでなんとかやっていたからだ。

 それでも小宮山の切なる願いと、真理子の勧めがあり、若手社員の一名を第二秘書にすることにしたのだ。


「でも、何でこの子なんだろ?」

 明彦はまじまじと資料を覗き込む。


 『絶対に、社長と合うと思うんです!』


 真理子はそう断言していたが、とてもそうは思えない。

 明彦は資料をデスクの引き出しにしまうと、帰宅するためにゆっくりと立ち上がった。
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