成瀬課長はヒミツにしたい
「いつこっちに呼び出されるか、わからないからな。基本的に外では飲まないんだ」

 成瀬は、乃菜が眠っている部屋の方を指さした。

「え?! もう家政婦の方が、メインになってるじゃないですか?!」

 真理子の驚いた顔を見ながら、成瀬は声を出して笑っている。

「そうかもな。こっちの方が合ってる」


 真理子はテーブルに肘をついて、小刻みに揺れる成瀬の黒い髪を見つめた。


 ――なんだか、不思議……。噂の“クール王子”と、二人きりで笑い合ってるなんて。


 ぼんやりと考えながら、酔いが回ってふわふわとしてきた頭を持ち上げる。

 ふと壁にかかった時計に目が留まると、時刻はもう22時を回っていた。


「うわ! もうこんな時間。私、帰りますね」

 バタバタと慌てて帰り支度をする真理子に、成瀬が首を傾げながら近寄った。

「泊まって行けばいいだろ? 部屋はいっぱい余ってるんだから」

「え?! そ、そんな!」

 真理子は大袈裟に驚きながら、次第に頬が赤くなるのを感じていた。
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