成瀬課長はヒミツにしたい
『もっと、成瀬課長の事を知りたい』

 真理子の欲求は日に日に増すばかりで、成瀬の側にいるだけでドキドキと心拍数が上がることも度々だった。

 だから本心を言えば、真理子も泊まり込みの家政婦でいいと思っていた。


 でも最近は、ある程度の時間になると「明日も早いから」と成瀬に帰される。

 だから、真理子がマンションに泊まったのは、あの一度きりだった。


 ――私が意識してるの、気がついてるのかなぁ。


 真理子は小さくため息をつく。


 ――私ってば、ほんっとうに恋愛音痴すぎ。成瀬課長の行動は全部、私が家政婦のパートナーだからで、きっと深い意味はないんだよね……。


 そう思いながらも、真理子は鼻先にかかる成瀬の吐息を思い出し、ついつい赤面する。


 真理子は頬を両手で押さえながら、そっと顔を上げた。

 成瀬はというと、会社用の眼鏡をかけた“クール王子”の顔で、淡々と卓也の話に頷いている。
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