成瀬課長はヒミツにしたい
「成瀬課長、いつもと違いましたよね?」

 卓也がボソッとつぶやく。

「え? そ、そうかな……? いつも通りだったような?」

 なんとなく取り繕うように答える真理子の顔を、卓也はジトっとした目で見つめている。


「真理子さんって、成瀬課長と親しいんですか?」

「は?! な、なんで?」

 真理子は思わず大きく体をのけぞらせた。


「成瀬課長があんな風に顔に出すのって、初めて見たんですよね」

「そ、そうかな? でも私、怒られたんだよ?」

「それすら今までは見たことなかったんですよ。何があっても冷静沈着っていうか。我関せずっていうか……冷たい感じで」

「ま、まぁ。確かにそうだけど……」

「社長とも親しそうだったし。……成瀬課長って、謎が多い人ですね」

 卓也はそれ以上何も言わなかった。
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