成瀬課長はヒミツにしたい

キラキラの宝物

「準備もできたし、少し早いけど出かけるか」

 成瀬が、壁にかかった時計に目を向けながら声を出す。


 真理子は「あ!」と小さく声をあげ、会社から持ってきた王冠のおもちゃを鞄から取り出した。

「乃菜ちゃん。これ、付けていく?」

 真理子は王冠の真ん中のボタンを押し、ライトを点滅させると、乃菜の目の前に差し出した。


「わぁ!」

 乃菜は目をまんまるにすると、興味津々で真理子の手元を覗き込む。

「それ。懐かしいな」

 成瀬も一緒に真理子の手元を覗き込んだ。


「すごくきれい! つけていいの?」

「もちろん!」

 真理子の声に、乃菜はぴょんぴょんとその場でジャンプした。


「じゃぁ付けてあげるね」

 真理子は、おだんごにした乃菜の髪にそっと王冠を付けてあげる。

 乃菜はいっちょ前に、その様子を手鏡で確認すると、にんまりと口元を引き上げた。

「かわいい!!!」

 乃菜は瞳を輝かせながら、真理子と成瀬の周りを何度もくるくると跳ね回っている。
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