成瀬課長はヒミツにしたい
「ねぇ、とうたん。おえかきしていい? のな、このキラキラもかきたいの」

 乃菜はそう言うと、走ってリビングのローテーブルに向かい、スケッチブックと色鉛筆を掲げた。

「いつもキラキラ描いてるもんな。まだ時間はあるし、描いてていいぞ」

 うなずいて答える成瀬を見ながら、真理子は首を傾げた。


「キラキラって?」

「あぁ。イルミネーションライトのことなんだよ」

「え? サワイライトのですか?」

「そう。前に乃菜を、うちの製品を使ったイルミネーションに連れて行ったことがあってな。それ以来、城とか公園とかのイルミネーションを自分でデザインして描いてるんだ」

 成瀬は重ねて置いてあるスケッチブックを取ると、ページを広げながら真理子に手渡した。


「すごい! 将来有望なデザイナーじゃないですか!」

「まあな。人事部としては、しっかりチェックしておかないとだな」

 成瀬はえっへんと、眼鏡をかけ直すふりをする。
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