成瀬課長はヒミツにしたい
 すると成瀬が、真理子の肩に手をかけながら、そっと耳元に顔を寄せた。

「お前は好印象だったよ。最初に見た時からね」

 成瀬はにっこりとほほ笑むと、(やぐら)の上から手を振っている乃菜の方へと歩いて行った。


「え……それって、どういう意味……?」

 真理子は、成瀬の背中をじっと見つめた。

 成瀬の行動や言葉にはきっと深い意味はない。

 そう心の中で自分に言い聞かせつつも、鼓動は次第に早くなっていく。

 真理子は熱をもったように赤くなる頬を手で仰ぎながら、成瀬の隣に駆け寄った。


「とうたーん。まりこちゃーん」

 乃菜はよっぽど楽しいのか、満面の笑みで手を振っている。

「乃菜。こっち見て」

 乃菜の様子を写真に撮る成瀬の隣で、真理子も大きく手を振った。


「あら。乃菜ちゃんとこの……」

 すると突然隣に立つ女性に話かけられ、真理子はドキッとして振り返る。
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