成瀬課長はヒミツにしたい
 オンラインショップの作成は順調に進み、残すは社長の最終確認のみとなっている。

 サイトがオープンして軌道に乗れば、新チームも解散となるだろう。


 ――会社で、柊馬さんと話す機会は減っちゃうな。


 少し寂しく思いつつも、真理子の心は穏やかだった。


 お祭りの日以降、真理子は成瀬の事を名前で呼ぶようになり、今まで以上に距離が縮まった気がする。

 相変わらず、会社での成瀬の態度は“クール王子”そのものだったが、家政婦でマンションに行けば笑顔で迎え入れてくれた。

 ちょっと乱暴で強引な成瀬の物言いも、愛情表現なのではないかと勘違いしてしまう程だ。


「真理子さん! データの取り込み、終わってますよ」

 卓也に肩をつつかれ、真理子ははっと顔を上げる。

「ごめん。ぼんやりしてた」

 仕事以外の事で思いふけっていたなんて、卓也に知られたら大変だ。

 真理子は慌てて姿勢を正す。
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