成瀬課長はヒミツにしたい
 ケータリングのメニューは様々で、職人が目の前で握ってくれるお寿司から、フレンチ、中華、カレーまで並んでいる。

 真理子はふと、一か所だけ列が長くなっている所に、目がとまった。


 そこは欧風カレーのゾーンで、業者のスタッフが一人で手一杯になっているようだ。


 ――大変そう……。手伝ったら、迷惑かな……?


 そう思いつつも、真理子は居ても立ってもいられなくなり、ついつい手を出してしまった。

「すみません。ありがとうございます」

 スタッフは忙しく手を動かしながら、申し訳なさそうにぺこぺことお辞儀をする。

「一人じゃ大変ですもん」

 真理子はそう答えながら、せっせとカレーを皿に盛りつけた。


 しばらく夢中でカレーを配っていると、隣にすっと背の高い人影が立つ。

「水木さんは本当に、根っからのお人好しですね……」

 ため息と共に、耳元に馴染みのある低い声が聞こえ、真理子はドキッと隣を振り返った。
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