成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子が、そのちぐはぐさに吹き出して肩を揺らしていると、成瀬が小さく肘で真理子の腕を小突いた。


「まあ、お前が元気そうで良かったよ。最近、疲れた顔してたからな……」

 急に優しい声を出す成瀬に、真理子は目を丸くして隣を見上げる。

「私のこと……見てたんですか?」

 真理子はドキドキと、鼓動が早くなるのを感じながら小さく声を出した。


「当たり前だろ。お前のことはいつも見てる……」

「え……」

「辛かったら、辞めてもいいんだぞ。家政婦……。そもそも俺が無理やり、お前をパートナーにしたんだから」

 成瀬はそう言いながら、静かに目を伏せた。


 真理子はバッと勢いよく隣を向くと、みんなから見えないように、成瀬のシャツの袖をきゅっと掴む。

「嫌です! 絶対にやめません。……側にいたいんです」

 真理子は、つい口をついて出た自分の言葉にはっとすると、大袈裟に両手を顔の前で振った。


「お前……」

 成瀬が何か言おう口を開く。

「あ、えっと。乃菜ちゃんの側に……ってことです」

 真理子は慌てて取り繕うようにそう言うと、うつむいて鍋のカレーをぐるぐるとかき回した。
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