成瀬課長はヒミツにしたい
「俺も、カレーもらおうかな。柊馬の特性トッピング付きで」

 すると、急に目の前で明るい声が聞こえ、真理子は慌てて顔を上げた。

 見ると社長が、にっこりとほほ笑んで立っている。


「いろいろとありがとうね。真理子ちゃん」

 突然、自分の名前を呼ぶ社長に、真理子は訳が分からずに首を傾げた。

「はい……?」

 そのまま隣の成瀬を見上げると、少し驚いたような表情で社長を見つめている。

「あの……」

 真理子が話しかけようとした瞬間、大きな音を立てて入り口の扉が開かれた。


「この騒ぎは、いったい何事だ!!」

 ものすごい剣幕の怒鳴り声と共に、人影がドタドタと中へ入ってくる。

「うわ。専務と秘書だ……」

 誰かの声が聞こえ、真理子もはっと入り口に目を向けた。


「ここで、何をしている!」

 専務は頭に撫でつけられた髪を乱しながら、大きく肩を怒らせている。

「あぁ、すみません。役員の皆さんには、お声かけしていなかったですね」

 社長はそう答えると、全く動じた様子は見せないまま、前へと歩み出た。
< 71 / 413 >

この作品をシェア

pagetop