成瀬課長はヒミツにしたい
「まりこちゃん、しってる? とーたんはね、まりこちゃんがきてから、いつもわらってるんだよ」

 ソフトクリームを買いに、売店へと向かう成瀬の背中を見つめながら、乃菜が嬉しそうな声を出した。

「え?」

 真理子はドキッとして、少し大人びた表情をする乃菜の顔を見つめる。


「とーたんは、まりこちゃんがいえにくると、いっつもたのしそうなの」

「でも、柊馬さんはいつだって、乃菜ちゃんに笑ってるじゃない?」

「ちがうんだよ」

 乃菜は口をとがらせると、人差し指をぴんと上に向ける。


「まりこちゃんは、トクベツなの!」

 乃菜の言葉を聞きながら、真理子はソフトクリームを持って歩いてくる成瀬の姿を見つめた。


 ――本当に、特別になれたらいいのに。


 真理子は苦しくなる胸元を、キュッと握りしめる。


「お待たせ。何、話してたんだ?」

 成瀬がソフトクリームを、乃菜と真理子に手渡しながら首を傾げる。

「おんなのこだけのヒ・ミ・ツ。ね、まりこちゃん」

 乃菜は、成瀬にツンとそっぽを向くと、真理子を振り返った。

「そう、ヒミツだね」

 真理子は乃菜と肩をすくめて、ほほ笑み合った。
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