成瀬課長はヒミツにしたい
 見ると目の前には、(きら)びやかなこの場には似合わない程、薄暗い顔をした男性が立っていた。

 スマートフォンを掲げるその男性の顔をまじまじと見つめ、真理子は思わず口元に手をあてる。

「……橋本部長?!」

 男性は真理子の声にピクッと耳を動かした。


「やっぱりな。最初は誰だか、わからなかったぜ、成瀬さんよぉ。随分と楽しそうじゃねぇか」

 成瀬がゆっくりと立ちあがると、橋本が静かにこちらへと近づいてきた。

 真理子は、怯える乃菜を急いで抱きしめる。

「何か御用ですか? 元営業部長の橋本さん」

 成瀬の厳しい声に、橋本はチッと舌打ちをした。


「誰のせいで、元営業部長になったと思ってんだよ」

「誰のせいでもありません。ご自身の行動の結果だと思いますが……」

「ふざけるな!」

 橋本の怒鳴り声に、周りでイルミネーションを見ていた人たちが振り返る。

 橋本は「ふんっ」と吐き捨てるように、鼻を鳴らした。
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