成瀬課長はヒミツにしたい
 成瀬はスマートフォンの通話終了ボタンをタップすると、ポケットにしまいながら玄関の扉をそっと開いた。

 室内はシーンとして、物音すら聞こえない。

 首を傾げながら乃菜の部屋に向かい、コンコンとノックすると、乾いた音だけが廊下に響いた。

 成瀬はしばらく、部屋の前に立っていたが中から返事はない。


「入るぞ……?」

 声をかけそっと扉を開けると、乃菜の手を握りながら眠る、真理子の姿を見つけた。

「真理子……?」

 真理子はよほど疲れているのか、軽く肩を揺すったが全く起きる気配はない。

 成瀬は、乃菜の手をそっと布団に入れると、真理子の身体をゆっくりと抱きかかえた。


 乃菜の部屋を出ると、廊下の一番奥の客間に入る。

「うーん……」

 客間のベッドに横たえると、真理子は気持ちよさそうに声を漏らし、そのまま深い眠りについたようだった。
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