成瀬課長はヒミツにしたい
 ベッドサイドに背中を預けながら静かに頭を持ち上げると、気持ちよさそうに眠る真理子の顔が目の前に見えた。

 今まで全く気にしていなかったが、もしかして真理子には、誰か恋人がいたりするのだろうか。

 成瀬はいつの間にか、自分の隣に真理子が立っていることが、自然になっていたことに気がつく。


「佐伯とは、親しそうだったよな」

 成瀬はそうつぶやくと、思わず手を伸ばし、そっと真理子の頬に触れた。

 真理子は、むにゃむにゃと口元を動かしながら、顔をほころばせる。


「あんな事があったのに、幸せそうな顔して……。お前、本当に面白いな」

 成瀬は真理子の顔を覗き込むと、そっと髪を撫でながら、おでこに唇を近づけた。

「ん……」

 真理子が寝返りを打ち、成瀬ははっとして顔を上げた。


 ――俺は、何をしようとしてたんだ……?


 成瀬は慌てて自分の口元に手をやると、戸惑った気持ちのまま静かに部屋を後にした。
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