成瀬課長はヒミツにしたい

動き出す状況

 真理子は、会社のパソコンを立ち上げると、ぼんやりと社内メールを確認していた。

 橋本にパークで出会ってからしばらく経つが、何事もなくいつもの日常が過ぎている。

 社内でも噂話が聞こえてこない所をみると、やはりあの写真は明るみになっていないのだろう。


「もし誰かが見てたら、女性社員が大騒ぎするはずだし……」

 あの出来事の後、成瀬からは『誰かに何か聞かれても、堂々としてろ』と言われている。

「とりあえず、何も話すなってことだよね」


 そして真理子は首を傾げながら、何度もぐるぐるとあの夜の記憶をたどる。

 何度思い出してみても、自分でベッドへ移動した記憶はない。

 乃菜の手を握っていたことまでは覚えているが、朝起きた時には客間のベッドで眠っていた。

 真理子はそれを成瀬に確認しようとしたが、はぐらかすように話を逸らされてしまったのだ。


 ――やっぱり……柊馬さんが、私を運んでくれたってことだよね?!
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