成瀬課長はヒミツにしたい
 そして真理子は、再び首を傾げる。

 ――別に隠す必要ないと思うんだけど……。まさか、重くて大変だったとか?! い、いびきとか聞かれてたら、生きていけないっ!


 成瀬に寝顔を見られたかも知れないと思っただけで、全身から汗が噴き出してくる。

 真理子はつい顔を両手で覆い、ぶんぶんと頭を振った。


「ちょっと! 真理子さん! 聞いてます?!」

 すると突然、耳元で卓也の大きな声が聞こえ、真理子はビクッと顔を上げる。

「な、なに? ごめん……聞いてなかった」

 真理子の声を聞くと、卓也はこれ見よがしに、大きなため息をついた。


「ですよね。完全に自分の世界に、入り込んでましたから」

 卓也はじろっと横目で真理子を見る。

「え?! 声、出てた?!」

 真理子は裏返った声を出しながら、口元をおさえる。


「何かあったんですか? 真理子さん、あのオンラインショップの仕事以降、上の空の事が多いんですよねぇ」
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