成瀬課長はヒミツにしたい

面談の日

 それから数日後、真理子の人事考課の面談日がやってきた。

 扉が閉じられた会議室の前で、椅子に座って順番を待つ。


 だいぶ時間が過ぎた頃、中から頬をピンクに染めた女性社員が出てきた。

「お疲れ様です」

 小さく挨拶すると、女性社員はそっと真理子に駆け寄った。

「面談の相手が、成瀬課長なんて、私たち本当にラッキーだよね。こっそりアドレス渡しちゃった」

 彼女はクスッと肩をすくめると、スキップでもするようにフロアに戻っていく。

「積極的……」

 真理子は呆気に取られながら、その背中を見送ると、気を取り直して扉をノックした。


「どうぞ」

 中から聞き慣れた低い声が響き、真理子は緊張しながら会議室へと入る。

 真理子の顔を見た途端、成瀬の瞳がわずかに揺れた気がしたが、すぐにクールな表情に戻った。

 真理子はどぎまぎしながら、椅子の背を引く。

 ゆっくりと腰かけようとしたその時、突然後ろの扉がノックと同時に開かれ、真理子はビクッとして立ったまま扉を振り返った。
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