チョコより甘く。
 そうして最後の一粒を手に取ったとき。


「あーもう! 待てって! お前から貰ったチョコならちゃんと食べるから!」

「ほえ?」


 食べると言われたけれど、すでに遅し。

 最後の一粒は私の口の中に入ってしまった。


「ウソだろ……?」


 嘆く充に流石にちょっと悪いことをしたかなって思ってしまう。

 でも嫌いって言ったじゃない……。


「私から貰ったチョコならって、気を使ってくれなくてもいいのに」

「ちげぇよ!」


 項垂れていた頭をぐわっと上げて、充は私に詰め寄ってくる。


「あーもう、こんなことなら変なこと試そうとしなけりゃ良かった。……仁奈!」

「は、はい!」


 嘆いていたはずの充は、真剣な目をして私を真っ直ぐ見る。

 好きな相手からそんな風に見られたら、胸の高鳴りを抑えることは出来なかった。
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