にょろとふて【短編】
 
 ──それから七日、ふてちゃんは毎日、あたしのえさを少し食べて数個を頬袋に詰めて、しばらく遊んで気がついたらいなくなる。

 ほんとう、どこから来るんだろう。小さくて、あたしよりも柔らかくて、いつもえさをかっぱらう可愛いふてちゃん。

 そんな日々を送っていた今日──

「うん? この箱はなんだ? にょろの玩具か何かか?」

「え? さあ、わかんない。けっこう前から、飼い主さんが色々詰めてたよ」

 不思議そうな目をするふてちゃんに、あたしは遊びたくて飛びかかった。そこからは鬼ごっことか、かくれんぼして遊びまくった。

 気がつくと、窓から見える光がオレンジ色になってきていた。

「じゃあな」

「え? うん。またねー」

 ──って振り返ったらもういない!?

 ふてちゃん帰るの早いなあ。あ、飼い主さんが帰ってきた。おうちに戻らないと怒られちゃう!

「ただいまあ~クレア!」

 飼い主さんてば、帰ってすぐ転がってあたしを見に来るんだから可愛い。おうちから出してくれて遊んでくれる。

 少し遊んだらごはんを作ってくれて、一緒に食べるの。この時間が大好き。

 でも、ここのところ大きな箱に周りの物を詰めていってる。どうするんだろう? 最近は何かを思い出しては、スマホってやつを見ながら一人で笑ってる。

「さあ~て。あとは当日に詰めちゃおう」

 嬉しそうに言ってあたしを抱きかかえた。とうじつって? 何かあるのかな?



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