その甘さ、毒牙につき

「み、ずきく…」



「伊咲さん、ずっとここにいたんでしょ。なんで出てこないわけ?」



私が言葉を発する間もなく問い詰める瑞樹くんに、元々縮まっていた私は更に小さくなる。



そ、そんなこと言われても…。



あの雰囲気の中「あの〜」と出ていったところで、気まずい空気が流れるだけだ。



それなら、何とかやり過ごすしかなくない…?



…とも言えず、下を向き黙りこくってしまう。



「…ねぇ、聞いてんの?」



「っひぁ…?!」



思ったよりも近くで聞こえた低くい声と、かかった息。
< 11 / 108 >

この作品をシェア

pagetop