その甘さ、毒牙につき
「み、ずきく…」
「伊咲さん、ずっとここにいたんでしょ。なんで出てこないわけ?」
私が言葉を発する間もなく問い詰める瑞樹くんに、元々縮まっていた私は更に小さくなる。
そ、そんなこと言われても…。
あの雰囲気の中「あの〜」と出ていったところで、気まずい空気が流れるだけだ。
それなら、何とかやり過ごすしかなくない…?
…とも言えず、下を向き黙りこくってしまう。
「…ねぇ、聞いてんの?」
「っひぁ…?!」
思ったよりも近くで聞こえた低くい声と、かかった息。