その甘さ、毒牙につき
「…もものガンコ」
「ひゃ…っ」
誰もいない、2人きりの教室に私の情けない声が響く。
さっきよりも近くなった距離。
背中に伝わる鼓動が、瑞樹くんに抱きしめられたのだと自覚させる。
「ももにそんな態度とられたら、僕泣いちゃうよ?」
そう言う瑞樹くんの息が耳にかかって、今にも唇が触れてしまいそうで。
「…っ、うそつき」
ドキドキしてるのがバレないように必死で、思わず冷たいことを言ってしまった。
…むり、死んじゃいそう。
抱きつかれることなんてよくあることなのに、未だに慣れないのはどうして?