その甘さ、毒牙につき
「…ムカつく」
「っ…?!」
まだまだ生徒たちが下校している真っ只中だというのに、私を平気で抱きしめた。
それはいつもの優しいものじゃない。
ぎゅうっと、まるで自分のものだと言い張るように隙間なく抱きしめられて。
っ…振りほどきたい、のに。
そんな力いっぱい抱きしめられたら、振りほどけないよ。
周りにいる女子の悲鳴に似た声や、ざわざわした空気。
恥ずかしいのと嬉しいので、もう頭がぐちゃぐちゃ。
「…予定変更」
「何が…わぁ!!」
離れたと思ったら、いきなり歩き出して瑞樹くんに引っ張られる。