理系女子の初恋
田中2
定時を過ぎて、残っていた仕事を片付けてから、第二営業グループを覗きに行った。
まばらに残る人の中に、お目当ての人物を見つける。
「池田くーん」
ヒラヒラと手を振って声を掛けると、池田君が顔を上げた。
「あれ?田中さん?お疲れ様です」
胡散臭い笑顔を貼りつけた池田君が近付いてくる、、こうして改めて見るとイケメンだな、むかつく。
「仕事中にごめんね、まだ終わらない?」
「いや、もうほとんど片付いてますけど、どうかしました?」
「いやね、ちょっと池田君に聞きたい事があって、良ければ飯でもどうかなって思ってさ」
池田君は一瞬不審そうな顔をしたものの、すぐに笑顔を貼り直す。
「わかりました、大丈夫ですよ、準備してすぐ出るんで、エントランスで待っててもらえますか?」
せっかくだから少し飲もうと言う事になり、2人で駅前の居酒屋に入った。
「俺と佐々木さん、仲はいいですけど、本当にただの友達ですよ」
「池田君、無駄を省いてくれるのはありがたいけど、せめて酒が来るのを待っても良かったのでは?」
「でも、他に話す事なんて正直ないでしょ?」
池田君は不機嫌な様子を隠すつもりがないらしい、、さっきまでの笑顔は何だったのか。
「池田君は麻友ちゃんの事が好きなんだと思ってたんだけど、違うの?」
穏やかに話すのはもう無理そうなので、こっちも直球で質問をぶつけてみると、どうやら地雷を踏んだらしく、不機嫌さに拍車がかかり、暗黒オーラが立ち込めた。
「好きですよ?でも、佐々木さんが俺の事好きじゃなければ、いくら俺が好きでも、そんなの意味ないじゃないですか」
「いや、そんな事は、、」
「俺だって色々頑張りましたよ?でも佐々木さんが俺を好きになる事はなかった」
「だから諦めて友達になる事を選んだのに、牽制されるとか、はっきり言って不愉快です」
「この前佐々木さんが言ってた好きな人って、田中さんの事なんですよね?」
「え?」
「こういうの、死体撃ちって言うんですよ、マナー違反ですよ」
麻友ちゃんが言ってた好きな人、、
それ俺じゃない、、
「池田君、ちょっと待って、一回落ち着いてくれるかな」
この前主任がジョークを外して照れた時、麻友ちゃんが蕩けるような表情で主任を見つめていたから、思わず視界を遮ってしまった。
そして、主任を目で追う麻友ちゃんの笑顔がかわい過ぎて焦り、無理矢理彼女をその場から遠ざけた。
あんな顔をした麻友ちゃんを見たのは初めてで、誰にもその顔を見せたくないと思ったから。
だけど、次にその顔を見た時も、麻友ちゃんの目線の先にいたのは主任だった。
その表情が『好き』から引き出されている物だと認めたくなくて、俺は気付かない振りをした。
もし麻友ちゃんに好きな人がいるんだとしたら、それは主任だ。
まばらに残る人の中に、お目当ての人物を見つける。
「池田くーん」
ヒラヒラと手を振って声を掛けると、池田君が顔を上げた。
「あれ?田中さん?お疲れ様です」
胡散臭い笑顔を貼りつけた池田君が近付いてくる、、こうして改めて見るとイケメンだな、むかつく。
「仕事中にごめんね、まだ終わらない?」
「いや、もうほとんど片付いてますけど、どうかしました?」
「いやね、ちょっと池田君に聞きたい事があって、良ければ飯でもどうかなって思ってさ」
池田君は一瞬不審そうな顔をしたものの、すぐに笑顔を貼り直す。
「わかりました、大丈夫ですよ、準備してすぐ出るんで、エントランスで待っててもらえますか?」
せっかくだから少し飲もうと言う事になり、2人で駅前の居酒屋に入った。
「俺と佐々木さん、仲はいいですけど、本当にただの友達ですよ」
「池田君、無駄を省いてくれるのはありがたいけど、せめて酒が来るのを待っても良かったのでは?」
「でも、他に話す事なんて正直ないでしょ?」
池田君は不機嫌な様子を隠すつもりがないらしい、、さっきまでの笑顔は何だったのか。
「池田君は麻友ちゃんの事が好きなんだと思ってたんだけど、違うの?」
穏やかに話すのはもう無理そうなので、こっちも直球で質問をぶつけてみると、どうやら地雷を踏んだらしく、不機嫌さに拍車がかかり、暗黒オーラが立ち込めた。
「好きですよ?でも、佐々木さんが俺の事好きじゃなければ、いくら俺が好きでも、そんなの意味ないじゃないですか」
「いや、そんな事は、、」
「俺だって色々頑張りましたよ?でも佐々木さんが俺を好きになる事はなかった」
「だから諦めて友達になる事を選んだのに、牽制されるとか、はっきり言って不愉快です」
「この前佐々木さんが言ってた好きな人って、田中さんの事なんですよね?」
「え?」
「こういうの、死体撃ちって言うんですよ、マナー違反ですよ」
麻友ちゃんが言ってた好きな人、、
それ俺じゃない、、
「池田君、ちょっと待って、一回落ち着いてくれるかな」
この前主任がジョークを外して照れた時、麻友ちゃんが蕩けるような表情で主任を見つめていたから、思わず視界を遮ってしまった。
そして、主任を目で追う麻友ちゃんの笑顔がかわい過ぎて焦り、無理矢理彼女をその場から遠ざけた。
あんな顔をした麻友ちゃんを見たのは初めてで、誰にもその顔を見せたくないと思ったから。
だけど、次にその顔を見た時も、麻友ちゃんの目線の先にいたのは主任だった。
その表情が『好き』から引き出されている物だと認めたくなくて、俺は気付かない振りをした。
もし麻友ちゃんに好きな人がいるんだとしたら、それは主任だ。