理系女子の初恋
「主任、修正完了したので、チェックお願いします」

「わかった」

主任のデスクに移動し、結果を待つ。

「うん、動作も問題ないし、大丈夫だな、先方に完了の報告しておいて」

「はい」

「で、この修正をなんでお前にさせたか、わかってんのか?」

「私が作った箇所に抜けがあり、尚且テストが甘くて見逃してしまった事で起こったバグだったから、、ですよね」

「こんな半端な仕事してると、すぐに契約切られちまうんだよ」

「すみません」

「お前さあ、やればできるのに、なんか最近おかしいだろ?どうかしたのか?」

「いや、あの、すみません」

主任が眉間に皺を寄せ、じっと私の様子を伺っている。

「まあいい、とにかく、もうこんな事ないように気を引き締めろ」

「はい、すみませんでした」

軽くお辞儀をしてデスクへ戻り、やり掛けになっていたバグの修正を始める。

リリース前とはいえ、こっちのバグも早々に片付けなければ、納期に間に合わなくなってしまう。

「あ、完了報告しなきゃだった」

作業していた手を止めて、一度深呼吸してから受話器を取る。

この案件の窓口になっている担当の山口さんが、どうにもこうにも苦手だ。

向こうも絶対私を嫌っている。

「お世話になっております、ユアシスコムの佐々木と申します」

『あ、どうも、修正の件?』

「はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません、修正が完了しましたので、ご確認お願い致します」

『はいはい、、あー、、大丈夫そうですね、、確認しました』

『田中さんの時はこんな事なかったんですけどねえ?』

「はい、申し訳ありませんでした」

『田中さんはお元気?前にもお願いしたと思うんだけど、お食事のお誘いの件、どうなってる?また念押ししてもらってもいいかしら?』

「あー、、はい、、お伝えしておきます、、はい、、はい、、では、、失礼致します」

山口さんは露骨に田中さん狙いで、用もないのに電話したり、無駄に打合せを設定したりと問題行動が目立ち、向こうの希望で担当が女の私に変更になった。

引き継いだ当初、山口さんの私へのあたりがキツ過ぎてまともに仕事ができず、本当に苦労した。

今では少し落ち着いたけれど、今度は田中さんと繋ぎをつけろと鬼の催促を受けている。

のらりくらりとかわしてはいるが、そろそろ限界かもしれない。

はあああ、面倒臭過ぎる。
< 3 / 26 >

この作品をシェア

pagetop