再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
帰国と再会
「雫せんぱーい、このリスト昨年のまでしか載ってないんですけど、どこに前の分あります?」
くりくり目の澄ちゃんが聞いてくる。
「うーんと、棚になかったとすると地下の書庫かもしれませんねー、はい、残念でしたー。」
しかし、澄ちゃんはにっこりと笑いこちらを見た。
「せ・ん・ぱ・い。私、10時から法務部の会議に参加予定だったの忘れてしまいましたか?」
しまった。ホントに忘れておりました。
「……このリスト、誰が欲しいって言ってるの?」
「それ、俺、俺。」
「は?オレオレ詐欺か?」
振り向くと同期の時田が笑っている。
「雫、俺も頼まれただけなんだけどさ、部長に。なんだか新しい課長が来るらしく、その人に必要なんだってさ。」
営業で日に焼けた浅黒い顔と白い歯が目立つ。
その白い歯はコマーシャル?とツッコむと、ふざけんなと背中を叩かれた。
私は、総務部所属の入社4年目。
この会社で総務の仕事は色々あるが、まあ出張査定や総会担当、庶務事務とりまとめなどを最近は後輩もできたので、頼られながらやっている。
法務部と今日は再来月の総会に関する会議。
今年は勉強のために、3年目になる澄ちゃんを行かせるのだ。
で、目の前にいる白い歯で笑う同期の時田は営業。
また、出張旅費のことで来たのかと思いきや、別な頼み事か。
資料探しなんて、私に頼んだら殺されると知っているから、内緒で澄ちゃんに頼んだな、さては……。