再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした

近づいた距離

 私の祈りが届いたのか翌土曜日は快晴。
 七分袖のワンピースがぴったりの気候で大満足。

 今日は早起きして、メイクしてそわそわしていると、母からもしかしてデート?と聞かれた。
 それくらい、ちょっと私いつもより浮き足だって見えたんだろうな。

 亮ちゃんと出かけると聞いたら驚くだろうなー、なんて思いながら、デートだといいんだけどね。とつぶやく私。
 母は、いつもなら即座の否定が返ってくる私が違う様子なので不思議そうに見て、それ以上は追求してこなかった。
 
 待ち合わせのツインスターホテルは通りの一本先にある。
 繁華街から入るのでうるさくはない。かといって安いホテルでもないからロビーも綺麗。

 ロビーで着いたよと亮ちゃんにメールを入れる。
 するとすぐに既読になり、わかったとスタンプが返ってくる。
 
 犬のスタンプ。昔亮ちゃんって犬みたいだと思ったんだよね。
 いつも約束すると家の前でおとなしく待ってたり、後ろをついてきてくれたり。
 
 無駄なことはほとんど話さない。
 それこそ、うん。そうだね。とか。まるで、犬がワンって言ってお座りして待ってるみたいな。
 
 私のこと、ハムスターって言うから、亮ちゃんは犬だねと言ったことがあった。
 そしたら、雫の番犬も悪くないなと頭を撫でながら笑ってくれた。
 
 今でも忘れない。素敵な笑顔だった。
 それからだ、私が彼を好きかも知れないと自覚しだしたのは。
 
 片思いのつらさをたくさん体験した。手を伸ばしたくても伸ばせない。もどかしい距離感。
 やっと手を伸ばせるところに戻ってきてくれた。嬉しい。

 
 
 
 


 
 
 
 
 
 

 

 
 

 

 
 
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